EVの普及に向けて熾烈な開発競争が続く次世代電池。中でも全固体電池はEVの課題となっている航続距離やコストの問題を解決する手段として、大きな期待が寄せられている。
そして日本でも全固体電池の実用化に向けた動きが加速してきた。
全固体電池とは
従来、電池に使われている電解液を用いずに正極と負極を固体の電解質でつなぐ電池で、充電と放電を繰り返して使える次世代電池のひとつである。
現在、リチウムイオン電池が主流となって使われている。リチウムイオン電池は、電解液の中にリチウムイオンが負極と正極を移動することで、放電や充電が行われる仕組みだ。
化学反応を起こして電気を取り出すために負極には炭素、正極には酸化物などが使われており、両者が触れ合わないようにセパレータが設けられている。
しかし、全固体電池は電解液ではなく、固体の電解質の中でリチウムイオンが移動する。電解質が固体のため、セパレータが不要というのがメリットだ。
また、リチウムイオン電池は電解液が漏れると大変危険なため、漏れ出さないように頑丈な容器に収める必要があった。
全固体電池は電解質が固定なので、形状の自由度が高く、小型化や大容量化も可能という大きなメリットがある。さらに多層化によって高速充電も可能なのだ。
夢のような全固体電池だが、実用化にはまだまだ課題がある。
全固体電池の課題は寿命の短さ
トヨタ自動車は2021年9月、EV普及に向けた戦略を発表
全固体電池の開発に多額の投資を行っているトヨタだが、この発表で全固体電池の寿命の短さが明らかになった。
全固体電池を長く使う中で、固体電解質と負極活物質の間にすき間が生じてしまうことが要因だそうだ。
そうした現象を抑制するため材料の開発に取り組んでいる。
日産が固体電池の研究・開発状況を説明
日産が2022年4月に全固体電池の研究・開発の現状について説明した。その中で日産はEV化の技術革新に2兆円を投資することを発表。
全固体電池については2024年までに横浜工場に試験的な生産ラインを作り、2028年に量産を目指すという。
日産が進めている全固体電池は硫化物系固体電解質で、水分を含むと有害な硫化水素が発生するが、抑制するための研究を進めている。
その他にも全固体電池の課題はあるものの、NASAや国内外の大学と協力し、全固体電池の劣化を防ぐための研究を続けているそうだ。
世界各国でしのぎを削っている次世代電池の開発。全固体電池開発の動きがグローバルで活発になることは間違いないだろう。