金属を使わない次世代のリチウムイオン電池「全樹脂電池」の開発が進められている。
APB株式会社と三洋化成工業株式会社が共同開発したバイポーラ積層型のリチウムイオン電池だ。
全樹脂電池は、電極材料や電解質に特殊な樹脂を使用しており、従来の電解液を使用しないのが特徴である。
この特殊な樹脂は電子やイオンが移動できる材料で、電解液を代替し、電池は固体のみで構成される。
全樹脂電池のメリット
全樹脂電池の主な利点は以下の通りである。
安全性
金属製の電極や液体電解質を使用しないため、リチウムイオン電池などに比べて安全性が高いとされている。
柔軟性
全樹脂電池は、樹脂の柔軟性により、曲げやねじりなどの変形に対しても耐性がある。
そのため、フレキシブルなデバイスやウェアラブルデバイスに適しているとされる。
環境への影響
全樹脂電池は、金属資源の使用を削減し、リサイクルが比較的容易であるため、環境への影響が少ないとされている。
高寿命
リチウムイオン電池の最大の敵は水分。今の電池は溶媒を乾燥させるのに大気解放になるので外から水分が入ってしまう。
これは電池にとって非常に問題で寿命に影響するのだが、全樹脂電池は真空で作るため、水分が入らず寿命は3倍に伸びると想定されている。
全樹脂電池のデメリット
一方、デメリットとしては実用化に向けた研究開発がまだ進んでおらず、市場投入には時間がかかっている。
そのため、製造コストが高い。
当初は2021年から生産を開始し、現状のリチウムイオン電池の価格の1/2程度の量産工場新設を目指すとしていた。
しかし、2023年に当初の計画を撤回。2025年に高速量産の実現、2026年度から大規模生産を予定している。
全固体電池との違い
全樹脂電池は樹脂で作成するので、ゴムマットを作るように簡単な構造で高速できて安い。
余計な部品や材料も不要。
また、異常時に燃えたり爆発したりしないのもポイントだ。
全樹脂電池の用途
用途としてはビルなどの施設の大型定置用蓄電池が挙げられている。
また、IoTが普及し始める昨今、軽量という特徴を活かしてスマートウォッチなどのウェアラブル機器なども考えられる。
さらに樹脂で構成されていることから、形状自由度が高いため、さまざまな場面での使用が期待される。
全樹脂電池はまだ実用化された製品が限られており、研究や開発が進行中。
今後の技術革新により、より高性能で持続可能なエネルギー貯蔵デバイスとして期待されている。
現状は電圧以外の具体的な数字は発表されていない。事業が成功するかはこれからだ。